「Cloudia」は、既にインドネシアの多数のお客様で使われています。現地法人単体での使用。現地法人と委託先の会計事務所とが両方で使っているパターン。そして、日本の親会社の本社会計部門も同時に使っているパターンなど形態や規模は様々です。
「海外拠点の現場から」シリーズの第三回目は、「海外拠点で実際にCloudiaを活用している会社を覗いてみよう」というテーマで、ユーザー事例を用いてその実際の利用形態や使用感をお伝えしていこうと思います。
今回、事例としてご紹介するのは、インドネシアの首都ジャカルタで、日本企業向けの専門サービスを提供している社員数25名程の小さな会社です。毎日のように政府役所への手続費用の現金支払いが発生し、毎週請求書発行を行うなど、トランザクション数としては多い方の業務内容の事例になります。Cloudiaを、Super Lite契約で利用。自社と記帳代行委託先の会計会社とで利用しているパターンになります。
(注) Cloudia Super Liteは、Cloudiaの基本機能を安価な月額利用料金形式でご利用頂ける契約形態です。
社長にお時間をいただき、どのような考えでどのような使い方をしているのかを伺いました。
社長の日本人は、営業部門出身であり財務諸表は読めるものの経理の専門知識があるとは言えず、決算仕訳までは自分では出来ないというのが正直な話だとのことです。社内には、会計専門部隊は存在せず、総務、人事、経理をまとめて面倒をみるアドミ・セクションと呼ばれているチームがあり3人の女性従業員で小規模に構成されています。それを社長直属部署にしてあり、社長自らが入出金や数字に関してモニタリングし責任を持つようになっています。
この会社は記帳代行業者に会計業務を業務委託していますが、そこに丸投げしているのではなく、ユニークな業務分担をしています。
コンセプトとしては、日次処理は自社で行い、月次処理/決算処理は記帳代行業者にて行うというものです。自社と記帳代行業者とは当然ロケーションは違います。クラウド型の利点を活かしているやり方ですが、どのように行っているのでしょうか。詳しく聞きました。
社内で日々発生する入出金はエクセルで作った社内フォーマットの出納帳に入力されています。その出納帳を毎日社長に見せて確認印をもらっています。それを翌日にCloudiaに入力。このままではCloudia本登録にならず一旦承認待ちになり、今度は社長がCloudiaで「承認」ボタンを押して本登録としています。
一見、面倒そうに見えるプロシージャですが、では、なぜこんなことをやっているのか。
社長いわく、「俺は見ているぞ」とスタッフを牽制しているつもりだとのことです。第一回「今知っておくべきインドネシアの会計事情」記事でも書きましたが、「人はどこの国の人でも“見られている”と思うと姿勢を正すものです。」なのでしょう。実際のところインドネシアでは日本で想像するより金銭がらみの不正が多いのは事実です。牽制が上手いバッテリーの盗塁阻止率が高いのと同じで、このような牽制の仕組みがあるから不正防止率が高いというのは公の数字ではないものの成り立つ公式なのではないでしょうか。これを内部統制の基本動作といっても過言ではないでしょう。
重複入力に思える出納帳とCloudiaへの入力も、Cloudiaのエクセル貼り付け機能を使うと、出納帳エクセルファイルの別シートに自動的にリフォーマットされたデータをコピー&ペーストするだけでCloudiaへ入力できるため、重複入力とは思っていないとのことでした。
月が締まると、記帳代行業者に伝票と証憑を物理的に届けます。
記帳代行業者は、既に会社側で入力した日々の仕訳データをCloudiaへアクセスして印刷し、そのデータと伝票および証憑とを照合し、入力データの正確性と仕訳の妥当性もチェックします。その後、月次仕訳を入力して財務諸表データを完成させます。思ってもみなかった見事な作業分担だと思いませんか。
社長は会社でCloudiaにアクセスして、その完成した財務諸表を照会したり、データをダウンロードして加工し、分析に使ったりしているそうです。
通常は、記帳代行業者に委託する場合、自社は伝票証憑を提出するだけで代行業者がデータを入力してくれます。これで自社の手間は省けます。 が、しかし、このサービス会社の社長さんによると、丸投げは良くない、内部統制や結果の迅速性においても問題が残るというのです。迅速性の問題というのは、記帳代行業者が入力する時間分、結果がでてくるのに時間がかかるということです。おそらく代行業者もスタッフに何件かの顧客を掛け持ちで担当させているでしょうから、何社もの大量データ入力は力作業。まさに量と力との対決になっているのでしょう。そしてそれに時間がかかるのは当然の結果です。それに比べてこの会社は、基本的には日々のデータは自社で入力していてCloudia上に既にあって、それを代行業者がネットワークを通じて参照している状況なので、優先して財務諸表の作成に取りかかってくれているようです。また、不明な点などがあって記帳代行会社から自社へ問合せがある時にも、Cloudiaで同じデータを見ながら電話で会話ができるので、何を言っているのかがよくわかりサポートもし易いし受け易いとのことでした。
それに加えて、自社でCloudia(他の会計ソフト含め)を使用していれば、入力したデータはそのままいつでも参照できますので、請求書を入力したらばそれは直ぐに売上の数字として見られる状態になっていると言うことになりましょう。
会計の専門スタッフがいなくて大丈夫なのかという質問をしてみたところ、日々の仕訳はほとんど借方貸方が決まっていて、請求書はこの仕訳、入金はこの仕訳で入力するというガイドラインを作ってあるので今のところ問題ない。専門的な仕訳のところを記帳代行業者にお任せしているという認識だとのことでした。
この事例サービス会社の社長の話を聞いていると、たとえ記帳代行業者に業務委託をしていても、あくまで当事者は自社なのであって、内部統制や財務諸表の結果(内容やその迅速性)について、業者に責任を負わせるのではなく、自社が責任を持っているのだという認識をしっかり持っているという印象をうけました。
それにしても自社と記帳代行会社とをCloudiaで繋げる発想に脱帽です。もし、この会社が日本に親会社本社があったら、その本社の経理部門がチェックのためにCloudiaデータを直接見ることも可能でしょう。また、代行業者との時と同様、本社とも同じデータを見ながら会話ができるので、本社からのサポートも受け易くなること間違いないでしょう。
今回の事例は比較的小規模な企業で、自社と記帳代行業者とがCloudiaを使用して、クラウドを通して同じデータを見られる環境を構築している例でした。この形態に日本の親会社が加わったり、別の国の現地法人が加わってきたり、そのようなグローバルな使われ方が広がっていくような気がしています。
小池雄一(こいけゆういち)
学習院大学卒業後、日本アイビーエム株式会社入社。IBM社内向け会計システムのSEを経て法人営業部へ異動、SE経験を持つ営業マンとして法人顧客に対しソリューション営業を展開する。その後、人材物流総合サービス会社の初代ジャカルタ駐在員事務所長としてインドネシアに赴任。ビジネス開発を推進し現地法人化する。自身は代表取締役となり、設立から事業開拓、運営、会社閉鎖(親会社の合併のため)と、会社の一生を6年間の駐在期間で経験する。帰国後、親会社合併統合システムの構築を指揮し軌道に乗せた後独立し、あたためていたビジネスプランを実現すべく再度インドネシアへ渡航。当地での就労ビザ取得代行専門会社の経営をはじめ、会計業務など各種業務課題に対して、ITと手作業を最適に組み合わせて日本企業が海外グループ全体を統括できる仕組みづくりを提案し実現するソリューション事業を展開中。